洗濯機は縦型派?それともドラム式派?
ドラム式洗濯機はいいっていうけれど、価格が高いからなぁ…と諦めかけている人は、ちょっと待って。
今回の記事では、一人暮らしや共働き世帯など「タイパ」や「コスパ」を重視する方に向けて、大手メーカー5社のドラム式洗濯機を調べ尽くし、どのモデルが「買い」なのか徹底比較していきたい。
なお、他の記事ではスペック中心の比較が多いと思うので、この記事では「使い勝手」や「地味だけどそこ重要だよね」という部分にもフォーカスしていく。
買ってから後悔しないためにも、最後まで見逃し厳禁だ。
そもそも、ドラム式洗濯機は必要?
まず、ドラム式洗濯機は縦型洗濯機に比べて「高価」だ。
そのため、価格に対する価値を見出せる生活をしなければ、単に「宝の持ち腐れ」となってしまいかねない。
ドラム式洗濯機の価値を感じられる人はズバリ、以下のいずれかにあてはまる人だ。
- 外に洗濯物をいちいち干すのが面倒
- 雨の日でも気にせず洗濯物を乾燥させたい
- とにかく、なんでもいいから楽をしたい!!!
要するに、家事の分量を減らしたい・洗濯という行為に人生のリソースを割きたくない方にはピッタリあってくる。
言い換えれば、「タイパ」を重視する一人暮らしや若年層の共働き家庭には、最適なアイテムとなるはずだ。
逆にこれらをメリットに感じない方にとっては、ドラム式を選択するメリットは得られにくく、縦型でも不満を感じることは少ないだろう。
まずは、自分がドラム式のメリットを享受できるライフスタイルを望むのか、想像してみることが大切になる。
ドラム式洗濯機もピンからキリまで
わざわざ高い洗濯機を買うなら、その機能をフルで使い倒したいし、自分に必要な機能を搭載したモデルを見つけたい。
そのためには、最初に相場感を抑えておこう。
ドラム式洗濯機の各モデルの相場感は、ざっくりこんな感じだ。
- 下位モデル(ヒーター式乾燥機能あり):10〜19万円
- 中位モデル(ヒートポンプ式乾燥機能あり):17万円〜30万円
- 上位モデル(ヒートポンプ式乾燥機能あり・タッチパネル・IoT対応)22万円〜37万円
下位モデルでも10万円超と、縦型の相場観を知っている人だと高く感じるだろう。
初任給が軽く吹っ飛んでしまうほどの大きな買い物になるので、よほどお金に余裕がある人を除いては、「必要な機能を搭載している、最も安価なモデルを探す」ことが重要になってくる。
まず、今回の登場人物(洗濯機)の紹介だ。
- パナソニック:LXシリーズ/SDシリーズ/VGシリーズ
- 日立:ビッグドラムシリーズ
- 東芝:ZABOONシリーズ
- シャープ:ESシリーズ
- AQUA:まっ直ぐドラムシリーズ
ドラム式洗濯機は、以上の大手5社がしのぎを削っている状況だ。
ここからは、大手5社のモデルがそれぞれどのような特徴を持っているのか、機能別に見ていきたい。
機能別各シリーズの特徴
では、前置きが長くなったが、それぞれの機能別に各社の特徴を見ていこう。最後には「買い」のモデルを一つに絞ってみたい。
比較する機能は、以下の通りだ。
①乾燥機能
②洗濯機能
③お手入れのしやすさ
④駆動方式
⑤その他筆者のコメント
⑥価格
乾燥機能
まず、ドラム式洗濯機といったら、洗濯機能と同程度に重要なのが「乾燥機能」だ。
乾燥機能は、各社特徴が出やすい項目だ。
- パナソニック:ヒートポンプ式の先駆け的存在で、安定感あり
- 日立:「らくはや風アイロン(特許技術)」で、衣類を大きく広げて乾燥
- 東芝:「ふんわリッチ速乾(ヒートポンプ除湿乾燥)」で乾きすぎによるシワを軽減/UV除菌など独自技術も/騒音が気になる?
- シャープ:「ヒートポンプ×小型サポートヒーター」で省エネハイブリッド/低騒音で夜中でも駆動可能/乾燥時間は長いというデメリットも
- AQUA:ドラムを静止した状態で乾燥できるコース・撥水加工された衣類の「撥水復元コース」あり/乾きづらさも指摘
そもそも、ドラム式洗濯機の中位〜上位機種で採用されていることが多い「ヒートポンプ式」は、低温(60℃以下)で衣類を乾燥させることが特徴だ。
ヒートポンプ式を採用するメリットは、衣類の傷みや縮みを少なくできることにある。
ヒートポンプ式は構造が複雑なため故障しやすかったり、熱交換器にホコリが溜まることによる乾燥機能の低下も問題とはなるが、ヒーター式より衣類の仕上がりがよいと好評だ。
(縦型洗濯機や安価なドラム式洗濯機では「ヒーター式」を採用していることが多いが、この場合衣類の縮みや傷みは発生しやすい傾向にある。)
なお、シャープ・AQUAはヒートポンプ式にヒーターをサポートで組み合わせた「ハイブリッド式」を採用している。
では、それぞれ各社の特徴を見ていこう。
まず、パナソニックは2005年にヒートポンプ式の乾燥機能をいち早く搭載した「先駆け的存在」だ。
そのためか、乾燥機能にゴテゴテと機能を追加することはあまりせず、「ヒートポンプ自体に絶対的な自信を持っている」ことがよく伝わってくる。
価格も高いが、「パナソニックだから許せる」と、絶対的な安心感が付加価値となっているようだ。
一方、日立・東芝・AQUAは、独自の技術を追求し、他社との差別化を図ろうと奮闘しているようだ。
日立は、前面から風を当てる「らくはや風アイロン(特許技術)」で、衣類を大きく広げて乾燥させ、素早く、天日干しよりもふんわり仕上げることができる。
東芝は、「ふんわリッチ速乾(ヒートポンプ除湿乾燥)」で乾きすぎによるシワを軽減するほか、UV除菌機能を搭載する。
また、変化球はAQUAで、ドラムを静止した状態で乾燥できるコース(スニーカーの乾燥などで活躍)、撥水加工された衣類の「撥水復元コース」など、日立や東芝とは違ったアプローチで「スキマ需要」を狙っているようだ。
一方、シャープは、乾燥機能そのものからは”一歩引いて”いるように見える。
乾燥機能そのものより、乾燥時の「駆動音がうるさい」というニーズに応え、低騒音で夜中でも駆動ができる点に重きを置いている。
洗濯機能
- パナソニック:「スゴ落ち泡洗浄/温水スゴ落ち泡洗浄」で汚れ・黄ばみ・匂いが落ちる/花王と共同開発した「汚れはがし剤」と洗剤をセットで使うと、つけ置きの手間が省ける
- 日立:「ナイアガラ洗浄」で汚れを浮かせて流す/「ナイアガラすすぎ」で衣類に付着した洗剤を完全に落とす
- 東芝:「ウルトラファインバブル洗浄」で微細な泡を発生させ、黄ばみ・黒ずみを防ぐ
- シャープ:「マイクロ高圧洗浄(水滴噴射)」で汚れを弾く/食べこぼし時に洗剤なしで使える「サッと予洗いコース(約5分)」、衣類の傷みを抑える「ホームクリーニングコース」あり
- AQUA:「Aiウォッシュ」で適切なコースがわからないときもおまかせ/ジェルボール洗剤向け「ジェルボールコース」もあり
ドラム式洗濯機は衣類を上から下に落とす「たたき洗い」と、急回転による「もみ洗い」を得意とする。
縦型に比べて衣類同士が絡まりにくいのが特徴であり、撹拌しながら衣類同士を「こすり洗い」する縦型とは洗い方が違う点は押さえておく必要がある。
なお、洗濯機能については、各社おおむねアプローチは似ているように感じるが、頑張って差別化を図ろうとしている。
パナソニックは「スゴ落ち泡洗浄」で汚れに直接アタックし、「温水スゴ落ち泡洗浄」で黄ばみや匂いを落とせることを強みとしている。
花王と共同開発した「汚れはがし剤」と洗剤をセットで使うと、つけ置きの手間を省くことができる。
日立は、「ナイアガラ洗浄」で汚れを浮かせて流し、「ナイアガラすすぎ」で衣類に付着した洗剤を完全に落とす。
東芝は「ウルトラファインバブル洗浄」で微細な泡を発生させ、「黄ばみ・黒ずみを防ぐ」ことに注力しているようだ。
逆に、シャープやAQUAは、独自のコースを用意することで、こまごましたニーズに応えようとしている。
お手入れのしやすさ
- パナソニック:洗濯槽洗浄・窓パッキング洗い・槽カビクリーンコースで清潔を保つ/糸くずフィルターは従来通り
- 日立:「らくメンテ」で乾燥フィルターを無くし大容量糸くずフィルターへ集約(不具合報告あり)/洗濯槽・乾燥経路・ドアパッキンを自動掃除
- 東芝:洗濯のたびに洗濯槽を洗浄する「自動お掃除モード」で黒カビを抑える/熱交換器自動洗浄/乾燥フィルターはレバーを押すだけで簡単にお手入れ可能
- シャープ:洗濯槽洗浄・乾燥ダクト・窓パッキング洗浄に加え、プラズマクラスターでカビ菌抑制/乾燥フィルターはゴミをかき集めてくれるが、ホコリをつまんで取る必要あり△/排水フィルターのゴミは取りやすい「するポイフィルター」
- AQUA:日常のお手入れは排水フィルターのみ/週1回乾燥補助フィルターを掃除
次は、タイパを重視する上で非常に重要な「お手入れのしやすさ」だ。
ドラム式洗濯機は、定期的に乾燥フィルターと排水フィルターの2つをお手入れする必要がある。
一般的には、乾燥フィルターは乾燥機能使用後に毎回ホコリを取り除く必要があり、排水フィルターは1週間に1回がお手入れの目安となる。
せっかくドラム式洗濯機で「時間」を買ったのに、結局お手入れが面倒であれば、ドラム式洗濯機を購入したメリットが薄れてしまう。
そこで、各社お手入れのしやすさには力を入れているように見えるが、中でも頑張っているのは日立だ。
日立は、ホームページ上でも、お手入れのしやすさをデカデカと打ち出しており、他のメーカーよりも力を入れていることがわかる。
一般的な機種は乾燥フィルター・排水フィルターのどちらもお手入れが必要となるが、日立の「らくメンテ」では、乾燥フィルター自体を無くし、本体下部の「大容量糸くずフィルター」の1箇所へ集約した。
このことにより、なんと、お手入れは月1回で良くなったとか。
お手入れが嫌いな人には、待望の機能だ。
ただし、非常に画期的な機能ではあるものの、不具合の報告が「かなり多い」点には注意が必要だ。
というのも、乾燥フィルターを無くしたのではなく、正確には”ユーザーの手が届かない場所に移動させた”というのが正解のようだ。
そのため、ユーザーのアクセスできない乾燥フィルターにホコリが溜まってしまい、乾燥機能が十分に発揮できない(衣類が乾き切らない)といった不具合が発生しているとのこと。
この不具合はメーカー側も把握しており、2022年モデルについては対応を言及しているが、最新モデルでこの不具合が解消されているのかはどこにも言及がない。
本不具合に対する公式見解は、このリンクに記載している。
高い買い物である故、この不具合が根本的に改善されているか不明という点では、大きくマイナス評価をつけざるを得ない。
次にお手入れのしやすさに力を入れているメーカーは、東芝だ。
従来通り乾燥フィルターと排水フィルターはそれぞれあるものの、乾燥フィルターはレバーを押すだけで、ホコリに触れずにポイっと捨てることが可能だ。
シャープも、乾燥フィルターのお手入れのしやすさを謳ってはいるが、ホコリを手でつかんで取り除く必要があるため、この点東芝に軍配が上がるだろう。
ただし、排水フィルターについては、シャープは「するポイフィルター」を採用しており、お手入れがしやすいものとなっている。
AQUAは、排水フィルターは都度掃除する必要はあるが、乾燥フィルターは週1回でよいという、一般的なドラム式洗濯機とは逆の仕様となっている。
お手入れのしやすさについては、不具合が報告されている日立を除けば、東芝が最もストレスを感じにくいといえるのではないか。
駆動方式
- パナソニック:ベルト式
- 日立・東芝・シャープ:DD(ダイレクトドライブ)式
- AQUA:不明(ベルト式?)
次に、ドラム式洗濯機の駆動方式について説明したい。
ドラム式洗濯機の駆動方式は、ベルト式とDD(ダイレクトドライブ)式の2種類があるが、ロスが少なく低振動なのはDD式だ。
東芝はS-DDモーター(特許技術)に力を入れており、低騒音であることを売りにしているものの、「乾燥時に大きな音や振動がする」といったマイナス評価もある。
(HP上においても技術面は全面的に押し出しているが、db表記は全面に押し出してはいないことからもわかる。)
この点、シャープは乾燥時間は他社よりかかるものの、独自の騒音対策(特許技術)で数値にも自信を持っているようだ。
その他筆者のコメント
- パナソニック:「パナソニックならでは」を全面に打ち出し、絶対的なブランドを確立
- 日立:お手入れ機能で他者を圧倒?でも不具合が気になる…
- 東芝:パナソニックに手が届かない人の救世主に
- シャープ:デザイン性もGOOD。ただ、扉がでかいよ。
- AQUA:洗濯機スペースが狭いなら、「まっ直ぐドラム」のAQUA一択
では、最後にその他筆者の印象を述べていきたい。
まず、パナソニックは、自社の「ブランド価値」や「ヒートポンプ式の先駆け」であることに、相当の自信を持っているようだ。
そのため、他社に比べ特長は弱いものの、「安定しているからパナソニックがいい」という人には刺さるものとなっている。
日立は、お手入れ機能で他者を圧倒しようとしたものの、不具合報告でかえって足を引っ張られている感が否めない。
もう少しユーザー目線に立って、「不具合は改善されました!」と全面に打ち出してもらわないと、なかなか買う気にはなれないだろう。
東芝は、後ほどにも述べるが、性能に対して価格が安い傾向がある。
そのため、パナソニックは高いけれどバランスが取れたものがいい・お手入れも楽にしたいという方にとっては、良い選択肢になる。
シャープはデザインにもこだわりがあり、洗濯機らしくない「かっこいい」デザインも強みとなる。(ただし、デザインにこだわった分、扉のサイズは大きいので注意。)
AQUAは、サイズ感がコンパクトなことが売りだ。
「縦型と同じスペースにおける」というコンセプトで、一般的な洗濯機パンにも置けることがメリットだ。
サイズでドラム式洗濯機を諦めていた人は、AQUA一択という人もいるだろう。
なお、最近ではパナソニックが、一人暮らし向けのコンパクトサイズ「SDシリーズ(低音ヒーター式)」を発表したので、こちらも比較検討に入れてみるとよい。
価格(中位・上位モデル)
- パナソニック:20〜37万円(指定価格制度で値引きができないモデルあり)
- 日立:18.5〜35万円(指定価格制度で値引きができないモデルあり)
- 東芝:23〜26万円
- シャープ:22〜25万円
- AQUA:17〜24万円
では、最後に価格を検討する。
今回は、あくまで「タイパ重視」で一人暮らしや共働き家庭を前提に比較検討をしている。
そのため、「洗剤・柔軟剤自動投入機能あり」かつ「お手入れが簡単」ということを必須条件としたい。(その場合、必然的に中位〜上位モデルに限定されてくる。)
価格帯だけでみると、パナソニックは他社と比較しても全体的に高い傾向がある。
「パナソニックという信頼感」を求めるのであれば良い選択肢となろうが、そうでなければ「割高感」を感じる。
パナソニックよりは安く抑えたいが、バランスを求めるなら東芝という選択になるだろう。
日立はお手入れのしやすさがメリットだが、不具合の多さからデメリットにもなり得る。
夜中に稼働させたい・デザイン性を重視するならシャープ、コンパクトならAQUAという選び方になるだろうか。
コスパ最強洗濯機はどれだ!?
では、最後に一人暮らし・共働き世帯向けの”コスパ最強洗濯機”を一台に絞ってみたい。
なお、各家庭において生活スタイルが異なることや、洗濯機スペースのサイズも異なると思うので、あくまで参考としてほしい。
筆者が選ぶコスパ最強洗濯機はこれだ!
東芝「ZABOON」TW-127XH4L・TW-127XH4R
(大手家電量販店で税込234,999円〜)
東芝の中位グレードであるTW-127XH4L・TW-127XH4Rがコスパ最強となった。
品番末尾のLとRは、左開きか右開きかの違いだけだ。
ここまで述べてきたように、東芝は全体的にバランスがよく、パナソニックと比べて価格も抑え目となっている。
また、お手入れも簡単で、洗剤・柔軟剤自動投入機能もついており、「時間を買う」方にとって必要な機能が一通り備わっているモデルになる。
さらに上位グレードになると、操作盤がタッチパネル式になったり、カラーもブラウンが選べるようになるが、価格も2万円程度上がってしまうことになる。(大手家電量販店で税込251,172円〜)。
ということで、今洗濯機選びで迷っている「タイパ重視」の方には、ぜひ検討候補の一つにしてみてはどうだろうか。